万屋「和華蘭堂」

きまぐれに、というかその日の気分で毎日話題決めて徒然と書きます

「出版」の話をしよう

ようこそ、万屋「和華蘭堂」へ!

次は何の話をしようと思ったら、副専攻の出版学からちょうどいいネタが出てきたので、これを機に出版全体の話をしようと思う。

さて、皆さんは「出版」という言葉で何を思い浮かぶのだろう。本?漫画?それとも最近では電子書籍だとか、自費出版だとか、いろんなやり方や形の出版がある。日本では江戸時代に出版文化が盛んになり、特に浮世絵などが19世紀にヨーロッパ入りを果たし繁盛したのだが、この時期の出版は現代の講談社集英社のものの様子とはずいぶん
違う。

f:id:yorozuyawakarando:20180430211709j:plain

当時は版元といい、出版・流通・小売をあわせて行ったが、その一番の例としてはかの歌麿北斎などを世に出した蔦谷重三郎なのだろう。あの代官山の蔦谷も、実はこの人物にちなんで命名したようだ。島田荘司の小説「写楽」を読み、個人的に日本の歴史人物で五本の指に入るぐらい面白い。なにより実業家の鑑のような人だったと想像してしまうが、全くあやかりたいぐらいだ。

では一方、江戸期のオランダの出版状況はどうなのかというと、持論になるが小差大同だったようである。同じく現在別々の出版と小売を兼業し、時には資金を合わせて本を出版することさえあった。違うところはといえば大体表紙をつけずに作って、お客さんの要望に沿って作るのが主流だったのである。和綴じの日本ではそもそもハードカバーは珍しかったろうね。今執筆中の小論文に、1806年に亡くなった方の残した書店の競売を資料として、当時の書店事情を明らかにしようとしているが、東西またがっても経済的事情によって結局一緒だな、と思ってしまう。

そんなこんなで趣味としては大変面白いのだけれど、これじゃ金にはならない、というのが現実だ。昔ながらの商法をやっていてもいつかは廃れるのが世の常だ。しかしどちらかというと書籍エージェントが近年欧米では蔦谷と同じような活躍をしているのが大変興味深い。この職業の方々は著者の著作権を売りにして、出版社と前金、そしてロヤルティー(要は売れた本の何パーセントが著者の懐に入るか)を交渉する役割を持つ。Boiled Eggs社というのがその例だが、日本ではまだ珍しい。個人的にやってみたい職業ではあるけれどね。それか、日本の小説を海外に紹介するニューヨークのVertical Publishing社も面白いのだ。手塚先生をはじめと刷る漫画ももちろん、東野圭吾桐野夏生、そして私が愛読する京極夏彦など、日本の犯罪小説を出していてありがたい限りだ。

しかし、それはまた別のときの話。